【イクメン専業主夫の性堕ち日誌 #6】「身体、硬いですね」〜女性専用スタジオの密室で、先生の指導が変わる〜

看板のないスタジオ、広げたマットとアロマ、畳まれたウェア——密室のレッスン

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。18歳未満の方は読めません。

公園で莉乃(りの)と別れてから、三日が過ぎた。連絡は、まだ来ていなかった。あれは、その場の勢いの社交辞令だったのかもしれない。悠(ゆう)は、そう自分に言い聞かせて、少しほっとしている自分と、少し落胆している自分の両方に気づいていた。妻の玲子は今日も出張で、帰りは明後日になる。がらんとした戸建てに、悠と、眠るひなの寝息だけがあった。

スーパーの前で

再会は、あっけなくやってきた。娘のひなをスイミングスクールへ送り届けた、その帰り道。住宅街のスーパーの前で、悠は莉乃と鉢合わせた。

「あ、藤宮さん」。エコバッグを提げた莉乃が、まるで待ち合わせでもしていたように、自然に笑う。買い物にしては、手ぶらに近い。それに、このスーパーは、彼女の家からもスイミングスクールからも、少し離れているはずだった。けれど悠は、その小さな引っかかりを、深く考えなかった。また会えた、という事実のほうが、胸の内側で静かに勝っていた。

「連絡、しそびれちゃってて。ごめんなさい」。莉乃は、悪びれずに首をすくめた。「この前のモニターの話、まだ生きてます? 迷惑だったら、忘れてくれていいんですけど」。

「あ、いえ。全然、大丈夫です」。答える声が、自分でも意外なほど早かった。莉乃は、嬉しそうに目を細めた。

「よかった。じゃあ、さっそくなんですけど……明後日の昼とか、どうですか? スタジオ、見てもらいたくて」。玲子が帰ってくるのは、明後日の夜。昼なら、ひなを保育園に預けている、あの、ぽっかりと空いた時間だ。悠は、頷いていた。

看板のない、雑居ビルの一室

約束の日は、秋晴れの、静かな平日の昼下がりだった。指定された場所は、住宅街の外れにある雑居ビルの一室。まだ看板も出ていないそのドアを開けると、白を基調にした、清潔な空間が広がっていた。ほのかに漂う、甘いアロマの香り。中央に敷かれたマットと、大きなピラティスマシン。生活の匂いのしない、二人きりの部屋だった。

「藤宮さん、いらっしゃい。待ってましたよ」。奥から出てきた莉乃の姿に、悠は思わず息を呑んだ。

公園でのタイトなワンピースとも、プールサイドの水着とも違う、本格的なトレーニングウェア。胸元の適度に開いたブラトップと、脚のラインが恐ろしいほどはっきりと出る、黒のレギンス。至近距離で見る彼女の身体は、圧倒的だった。引き締まったウエストから、丸みのある腰へと続く曲線。薄い生地越しにわかる、健康的で弾力のありそうな肉体。大人の女性の色気が、汗ばむような生々しさで、部屋を満たしていた。

「着替え、そこのパーテーションの奥にあります」。渡されたTシャツとハーフパンツに着替え、マットの上に立つ。悠の強張りを見て取ったのか、莉乃は「ふふ、そんなに硬くならないで」と、からりと笑った。

まずは、ほぐしましょうか

「藤宮さん、普段ぜんぜん運動しないって言ってましたよね」。莉乃は、そう言って首をかしげた。「じゃあ、いきなり動くと危ないので、まずは軽いストレッチで、身体をほぐすところからいきましょう」。

言われるまま、肩を回し、前屈をする。長く座りっぱなしで書いている悠の身体は、自分でも呆れるほど硬かった。指先は、膝にすら届かない。「わ、ほんとに硬い」。莉乃は、おかしそうに笑った。「これは、ほぐしがいがありますね」。

ひととおり身体が温まったところで、莉乃が「じゃあ、次は骨盤の歪みを見ますね」と、すっと悠の背後に回った。「失礼します」という声とともに、両手が、悠の腰のあたりにそっと添えられる。インストラクターの手つきだと、頭では分かっていた。それでも、薄いシャツ越しに直に伝わる指先の体温に、悠の背骨が小さく強張った。声は、出さなかった。ただ、喉の奥が、ひとつ鳴った。

莉乃は、悠の背中に自分の胸元をそっと押し当てるようにして、肩甲骨を引いてくる。薄いウェア越しに伝わる、柔らかく重い感触。汗とアロマの混じった甘い匂いが、鼻先をかすめた。悠は、奥歯を噛んで、こみ上げるものをやり過ごした。

股関節が、硬いですね

「じゃあ、仰向けになってください。股関節を、ゆっくりほぐしていきますね」。言われるまま、マットに横たわる。莉乃は悠の脇に膝をつくと、片方の膝を立てさせ、それを胸のほうへ、ゆっくりと倒し込んだ。股関節の奥が、じんわりと伸びる。「痛かったら、言ってくださいね」。

彼女が体重をかけて膝を押すたび、上体が悠のほうへ近づき、開いたウェアの胸元が、すぐ目の前で揺れた。悠は、天井の一点を見つめて、視線をやり過ごそうとした。

「藤宮さん、股関節、すごく硬い。……次は、両膝を立てて、左右に開いてみましょう」。莉乃は、悠の両膝を立てさせると、内ももに手を添え、外側へと開かせた。手のひらの体温と、覗き込む彼女の吐息の近さ。その距離で、悠の身体は、抗いようもなく反応してしまった。

ハーフパンツの前が、取り繕いようもないほど、はっきりと張りつめる。開かれた脚のちょうど中心で、それは、隠しようもなかった。莉乃の手が、ふっと止まった。

わたしも、嘘をついてました

悠は、顔から血の気が引くのを感じた。「……っ、すみません」。絞り出した声が、掠れる。「先生が、ちゃんと指導してくれてるのに……本当に、ごめんなさい」。

情けなさと羞恥で、目も開けられない。軽蔑される。追い出される。そう思って身を固くする悠に、莉乃が、ふっと力を抜いて、小さく笑った。「……顔、あげてください」。

おずおずと目を開ける。悠を見下ろす莉乃の瞳は、軽蔑どころか、熱を帯びて、とろりと濡れていた。彼女は、悠の顔のすぐそばに、自分の顔を寄せた。「謝らないで。……だって、わたしも、藤宮さんに、謝らないといけないこと、あるんです」。

「え……?」

「わたし、嘘を、ついてました」。動揺で、思考が空回りする。嘘。資格のことか、それとも、サロンのことか。困惑する悠の胸元に、莉乃は自分の胸をそっと押し当てながら、くすりと微笑んだ。「わたしがオープンするお店……あれ、女性専用なんです」。

「……女性、専用? じゃあ……」

「はい。いつかは男性も、とは思ってますけど、それはずっと先の話で。今のところは、女性限定にする予定なんです」。

じゃあ、なぜ、自分を「男性モニター」として、ここへ呼んだのか。その意味が腑に落ちた瞬間、悠の背筋を、ぞくりとした熱が駆け抜けた。「じゃあ……なんで……」。「なんで、だと思います?」。

莉乃の手が、ゆっくりと、けれど確実に、ハーフパンツの上から、張りつめた悠のそれへと伸ばされた。逃がさないように、やさしく、けれど力強く、手のひらで包み込む。あの公園の、少し満ち足りて見えた微笑の意味が、今になって、悠の頭の隅で、静かに像を結びはじめていた。

「ずっと……触ってみたかったんです。ひなちゃんの、お父さん」。

(第7話へ続く)


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